歩くことは、健康に良い運動として知られています。しかし、歩きすぎてしまうと、かえって健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
せっかく健康のために始めたものの、逆効果になると意味がありませんよね。
そこで、本記事では、歩数と健康の関係についての研究結果などを基に、1万歩や2万歩が歩きすぎかについて確認します。
1万それとも2万歩?歩きすぎの歩数とは
1万歩や2万歩が歩きすぎかを、運動ガイドなどから見ていきます。
- 運動ガイドや研究を基にチェック
- 狩猟採集民族の生活からチェック
運動ガイドや研究を基にチェック
健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023では8,000歩を目標としています。
また、群馬県中之条町の65歳以上の全住民である5,000人を対象にした研究では、8,000歩(うち20分の中強度活動)が望ましいとの結果になっています。
1万歩はそれよりも少し多いですが、歩きすぎとまではいえないでしょう。
それでは2万歩の場合はどうでしょうか?
歩数に関する研究は2万歩までのものが多く、2万歩以上が歩きすぎかについては、明確な答えはありません。
後で紹介する研究においても、2万歩までは歩数が増えるほど死亡率が下がり続けています(低下効果が大きいのは8,000歩〜15,000歩あたり)。
狩猟採集民族の生活からチェック
人類の歴史は600万年の進化史でみれば殆ど狩猟採集時代と言われています。
農耕などを実施した期間はわずか1万年ほど、人類の歴史の600分の1に過ぎません。人類の歴史の99%が狩猟採集をしていたことを踏まえると、狩猟採集民族の生活が人類の身体に適している可能性が高いでしょう。
タンザニアのハッザ族
タンザニアの狩猟採集民族ハッザ族の男性は1日に約11キロ歩きます。歩数でいうとおよそ1万5千歩程度となります。彼らの生活が人類の大部分に近いとすると、人体にとっては1万5千歩でも多すぎるということはないと考えられます。
(参考)Hunter-Gatherer Energetics and Human Obesity
アフリカの熱帯雨林のピグミー系狩猟採集民族
もう1つ狩猟採集民族の歩数の参考データとしては、アフリカの熱帯雨林で移動生活をおくる狩猟採集民族のものがあります。
同民族の子どものは思春期に入ると行動範囲が広がり、1日の歩数は男女共に2万歩以上となっています。
これらを踏まえると1万〜1万5千歩は適した歩数。2万歩は多いものの、明らかに歩きすぎとまではいえないと考えられます。
歩きすぎるとどうなるかについて
ただし、その人の状況によって適した歩数は変わります。足や膝などの関節に持病がある人や、高齢者などは、歩きすぎによる悪影響を起こしやすいため、注意が必要です。
歩きすぎによる健康への悪影響としては、以下のようなものが挙げられます。
- 足や膝などの関節に負担がかかり、痛みや炎症を引き起こす
- 脱水症状や熱中症などのリスクが高まる
- 疲労が蓄積し、免疫力が低下する
- メンタルヘルスに悪影響を及ぼす
上記のような症状がある場合には、歩きすぎの可能性がありますので無理をしないようにしてください。
歩数と健康の研究を紹介
ここでは歩数と健康に関する研究を2つ紹介します。
1つ目は中之条研究、2つ目は22万人のデータ分析した研究です。
中之条研究
中之条研究とは、群馬県中之条町の65歳以上の全住民である5,000人を対象にした、日常の身体活動と病気予防の関係についての調査研究です。
中之条研究では、歩数と中強度活動の組み合わせが、健康寿命の延伸に効果的であることが示されています。
具体的には、1日8,000歩以上歩き、そのうち20分以上中強度活動を行うことが多くのケースで有益との結果が出ています。
(参考)「1日8000歩/そのうち20分の速歩き」で、病気知らずの人生を――住民5000人、20年の追跡調査が証明する健康長寿の黄金律 | Think Blog Japan
22万人のメタ分析研究
2つ目はポーランドのウッジ医科大学と米ジョンズ・ホプキンス大学医学部による共同研究です。
17件(対象者の合計は22万人)の研究結果を分析し、歩数と死亡率との関係を調査したものです。
(参考)The association between daily step count and all-cause and cardiovascular mortality: a meta-analysis European Journal of Preventive Cardiology, Volume 30, Issue 18, December 2023, Pages 1975–1985
1,000 歩増加すると、全死因死亡リスクが 15% 減少したことがわかっています。
下図は歩数と相対的な死亡リスクに関するグラフです。
0歩を基準にすると、死亡リスクは4,000歩で半減、8,000歩でさらに半減しています。12,000歩程度までは歩数に比例して死亡率が低下しています。その後低下率は小さくなるものの、2万歩に近づくにつれ死亡リスクも低下しています。
参考文献
- 「1日8000歩/そのうち20分の速歩き」で、病気知らずの人生を――住民5000人、20年の追跡調査が証明する健康長寿の黄金律 | Think Blog Japan
- The association between daily step count and all-cause and cardiovascular mortality: a meta-analysis European Journal of Preventive Cardiology, Volume 30, Issue 18, December 2023, Pages 1975–1985
- やり過ぎ厳禁! 「適度な運動量」ってどれくらい? – 日本経済新聞
- 本当のところ「1日何歩」歩くのがベストなのか | 東洋経済オンライン