外出先でスマートフォンなどに充電するためのモバイルバッテリー。一度買ったものをそのまま使っている人もいるのではないでしょうか。
なんだか充電できる量が減ってきたけど、モバイルバッテリーの寿命ってどのくらいだろうという疑問がある人もいると思います。
本記事ではモバイルバッテリーの寿命や利用のコツについて説明します。
- モバイルバッテリーの利用頻度ごとの寿命
- 寿命が近づいた場合の症状
- モバイルバッテリーを長持ちさせるコツ
- おすすめモバイルバッテリー
モバイルバッテリーの寿命は1.5年〜5年
モバイルバッテリー(リチウムイオンバッテリー)の寿命は1.5〜5年程度です。
1日に一回使った場合で1.5年の寿命、ほとんど使わなくても5年ほどで買い換えるのが安全面でおすすめです。
何回使える?利用頻度ごとの寿命について
仕様としては「フル充電サイクルを約500回繰り返した時に、本来の容量の最大80%を維持」できるように設計されているのが一般的です。
そのため寿命の期間は使う頻度ごとに異なり、次のようになります。
- 毎日使う場合:1.5年程度
- 2日に一回使う場合:3年程度
- 3日に一回使う場合:5年程度
あまり使わない場合の寿命は5年
1週間に1度程度の利用であれば5年程度で寿命がきます。
仮にそれよりも利用頻度が小さい場合でも、安全面では最長5年を目安に買い換えるのが推奨されています。
モバイルバッテリー大手企業であるAnkerの担当者は、「あまり使わない場合でも3〜5年で買い替えていただくのがおすすめ。10年は避けて欲しい」というような発言をしています。
モバイルバッテリーが寿命に近づいた時によくある症状
モバイルバッテリーが劣化し、寿命が近づいてきた場合によくある症状を説明します。
バッテリーの持ちが悪くなる
モバイルバッテリーが劣化した際に一番わかりやすい症状としては、バッテリーのもちが悪くなるという点です。
例えば、いままで満充電でスマートフォンを1回満充電できていたものが、途中までしかできなくなると寿命が近づいてきたと考えることができます。
一般的には、満充電時の容量が本来の80%になると寿命と言われています。
充電に時間がかかるようになる
モバイルバッテリーが劣化すると、充電に時間がかかるようになります。
これは、電極表面に堆積した抵抗成分の増加することが理由です。
モバイルバッテリーの寿命を決める要因
モバイルバッテリーの寿命を決める要因としては大きく以下の3つがあります。
(参考:BATTERY UNIVERSITY)
サイクル劣化(利用による劣化)
1つ目はサイクル劣化です。フル充電のサイクルを何回くり返すかというのが劣化の要因で、充電と放電(利用)のサイクルを繰り返せば繰り返すほど、劣化が進みます。
一般的には、この充電サイクルが500回になると、容量が本来の容量の80%程度になると言われています(ものによっては1,000回などもありますので、製品の使用を確認ください)。
放電深度(1回で何%くらい使って充電するか)
放電深度 (DoD) によっても、バッテリーの寿命が決まります。放電が少ない (DoD が低い) ほど、バッテリーは長持ちします。可能であれば、完全放電を避け、残容量が25%になったら75%になるまでの50%分の充電をするのが望ましいです。
下記の図は充電深度ごとに一定回数充電後の残容量を調べたものです。
- ケース 1: 75 ~ 25% の50%で使用した場合。3,000 サイクル (容量の 90% まで) で、合計値は150,000(50%×3,000サイクル)となります。(EVバッテリー、新品)
- ケース 2: 85 ~ 25% の60%を使用した場合。2,000サイクルあります。合計値は120,000(60%×2,000サイクル)となります。
- ケース 3: 100 ~ 25% の75% を使用した場合。合計7,500(75%×1,000サイクル)となり、最も寿命が短いです。(携帯電話、ドローンなど)
保存劣化
実際にバッテリーを使用していなくても、保管しているだけでも実は劣化が進みます。その劣化のことを保存劣化といいます。
高温下でかつ満充電状態が最も劣化をすすめることになります。
次の表はBattery Universityというサイトから引用した表で、温度と充電容量ごとに1年間保存した場合の満充電時容量の表になります。
この表からは高温になればなるほど、保存時の充電容量が大きくなるほど、満充電容量が少なくなってしまうことが分かります。
温度 | 40%チャージ | 100%チャージ |
---|---|---|
0℃ | 98% (1年後) | 94% (1年後) |
25℃ | 96% (1年後) | 80% (1年後) |
40℃ | 85% (1年後) | 65% (1年後) |
60℃ | 75% (1年後) | 60% (3ヶ月後) |
モバイルバッテリーの寿命を延ばすためのコツ
モバイルバッテリーの寿命を伸ばすためにユーザができることは大きく2つです。
- 高温下での保管や利用を避ける
- 満充電に近い状態を避ける
高温化では化学反応が促進されバッテリーの劣化が進みやすくなります。また、満充電の場合もバッテリー内部の圧力が高い状態となり、劣化につながります。
モバイルバッテリーの寿命を延ばすコツを説明しましたが、気にしすぎると本来のモバイルバッテリーとしての価値を発揮しづらくなります。
過度に気にせず、消耗品と割り切って使うのがおすすめです。
おすすめモバイルバッテリー
ここではモバイルバッテリーの有名メーカーであるAnkerのおすすめモバイルバッテリーを3つ紹介します。
選び方のポイント
適切な容量(重さ)で、充電時間が早いモバイルバッテリーを選ぶのがおすすめです。
モバイルバッテリーに関するよくある後悔としては、「本体が重くて使わなくなってしまった」、「モバイルバッテリー自体への充電に時間がかかる」というのがあります。
重さはバッテリーの容量によって変わりますので、使い方にあったサイズのモバイルバッテリーを選択しましょう。大は小を兼ねるという考えで大容量を買っても、重くて使わなければ意味がなくなってしまいます。
また、製品によっては充電時の電流量が小さく、充電に非常に時間がかかるものもあります。特に、10,000mAh以上のモバイルバッテリーではUSB-PDという高速充電に対応しているものがおすすめです。
本記事では充電に関しては急速充電に対応したものだけを選んでいますのでご安心ください。
コンパクトタイプ:Anker PowerCore III 5000
卵2つ分ほど (約113g) の軽さと手のひらサイズの小型設計で、持ち運びに最適です。小型軽量設計ながら5000mAhのバッテリーを搭載し幅広い機器を約1回充電できます。
USB-PDという高速充電には対応していませんが、このクラスでは問題はありません。
中容量タイプ:Anker PowerCore 10000 PD Redux 25W
重さは194g、容量は10,000mAhのモバイルバッテリー。スマートフォンに約2回、タブレット端末に約1回充電可能です。
USB PD対応の充電器 (別売り) と付属のケーブルを利⽤した場合、2.8時間で急速充電が可能です。
大容量タイプ:Anker PowerCore Essential 20000 PD 20W
重さ約346g、容量20,000mAhのモバイルバッテリーです。スマートフォン約4回、タブレット約2回の充電が可能です。また、機種によってはモバイルノートPCも約1回充電可能です。
モバイルバッテリーに関するよくある質問
短時間でも充電器に繋げると充電回数1回のカウントになりますか?
モバイルバッテリーのサイクルカウントは100%の充電を1回としています。そのため、例えば50%の充電であれば、2回で1サイクルになります。
バッテリーを使い切ってから充電する必要がありますか?
使い切ってから充電する必要はありません。ただし、満充電状態と空の状態はモバイルバッテリーに好ましくないので注意しましょう。
充電しながら使っても問題ないですか?
充電しながら使うこと自体は禁止されているわけではありませんが、好ましくはありません。充電しながら利用すると高音になりがちで、モバイルバッテリーは高温状態で劣化しやすくなるためです。
長期間保管する場合はどうすればよいですか?
高音にならない場所に、50%程度の残容量で保管するのがおすすめです。
保管時に注意すべきポイントが2つあります。保管環境の温度とバッテリーの残容量です。
満充電ではなく、50%前後充電した状態で保管するのが望ましいです。バッテリーを完全に使い切った状態で保管すると、過放電という状態になり利用できなくなる可能性があります。一方、満充電状態で長期間保管すると、バッテリーが劣化しやすくなります。
モバイルバッテリーについての参考サイトを教えてください
モバイルバッテリー(リチウムイオンバッテリー)の特性や利用方法についての参考サイトを3つご紹介します。
Anker
モバイルバッテリーメーカーAnker(アンカー・ジャパン)のサイトです。初心者向けにモバイルバッテリーの正しい使い方を紹介しています。
BATTERY UNIVERSITY
BATTERY UNIVERSITYは実践的なバッテリー情報を提供する無料の教育 Web サイトです。
英語のサイトですが、バッテリーに関する情報が網羅的に記載されています。
リチウムイオン電池の劣化挙動調査
バッテリーの劣化特性についてまとめられた調査論文です。
令和2年3月に出された調査報告書で、国立研究開発法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センターにより作成されています。