インターネットに接続された機器を識別するための番号であるIPアドレス。
ウェブサイトの閲覧やメールの送受信など、私たちが日常的に行っているインターネット通信に不可欠な存在です。そして、このIPアドレスを効率的に管理・運用する上で重要なのが「IPアドレスの範囲」という考え方です。
この記事では、IPアドレスの範囲の基本的な知識について解説します。
IPアドレスの基本構造
IPアドレスは、0から255までの数字4つを「.(ドット)」で区切った形式(例:192.168.0.1)で表されます。これは32ビットの2進数を8ビットずつ4つに分けて、それぞれを10進数で表したものです。
IPアドレスは大きく「ネットワーク部」と「ホスト部」の2つの部分に分かれています。
- ネットワーク部:どのネットワークに属しているかを示す部分
- ホスト部:そのネットワーク内の個々の機器(ホスト)を識別する部分
例えば「192.168.1.0」では「192.168.1」がネットワーク部、「0」がホスト部にあたります。

IPアドレスの範囲とクラス分類
IPアドレスは用途やネットワークの規模に応じて、クラスA~Eの5つのクラスに分類されます。主に使われるのはクラスA~Cです。
クラス | 範囲(10進数) | ネットワーク部の長さ | ホスト部の長さ | 割り当て可能なホスト数 | 主な用途 |
---|---|---|---|---|---|
クラスA | 0.0.0.0 ~ 127.255.255.255 | 8ビット | 24ビット | 約1,677万台 | 大規模ネットワーク(大企業など) |
クラスB | 128.0.0.0 ~ 191.255.255.255 | 16ビット | 16ビット | 約6万5千台 | 中規模ネットワーク(大学など) |
クラスC | 192.0.0.0 ~ 223.255.255.255 | 24ビット | 8ビット | 254台 | 小規模ネットワーク(小企業など) |
クラスD | 224.0.0.0 ~ 239.255.255.255 | – | – | – | マルチキャスト用 |
クラスE | 240.0.0.0 ~ 255.255.255.255 | – | – | – | 研究用 |
このクラス分けは、IPアドレスの先頭ビット列によって識別されます。
プライベートIPアドレスの範囲
インターネット上で使われるグローバルIPアドレスとは別に、社内ネットワークなどで自由に使える「プライベートIPアドレス」の範囲が決まっています。
クラス | プライベートIPアドレス範囲 | ネットワーク数 |
---|---|---|
クラスA | 10.0.0.0 ~ 10.255.255.255 (10.0.0.0/8) | 1 |
クラスB | 172.16.0.0 ~ 172.31.255.255 (172.16.0.0/12) | 16 |
クラスC | 192.168.0.0 ~ 192.168.255.255 (192.168.0.0/16) | 256 |
これらの範囲内のIPアドレスはインターネット上では使われず、社内LANなど限定されたネットワーク内で使われます。
IPアドレス範囲の指定方法(CIDR表記)
IPアドレスの範囲を効率的に表すために「CIDR(Classless Inter-Domain Routing)」という表記方法があります。これはIPアドレスの後に「/」と数字を付けて表します。
- 「/」の後の数字はネットワーク部のビット数を示す
- 数字が大きいほどネットワーク部が長く、ホスト部が短い(つまりネットワークの規模が小さい)
例:
- 192.168.1.0/24 → 192.168.1.0 ~ 192.168.1.255 の256個のIPアドレス
- 10.0.0.0/8 → 10.0.0.0 ~ 10.255.255.255 の約1,677万個のIPアドレス
この表記により、IPアドレスの範囲を簡潔かつ柔軟に指定できます。
まとめ
- IPアドレスは「ネットワーク部」と「ホスト部」に分かれ、範囲は0.0.0.0~255.255.255.255まである
- クラスA~Eに分類され、クラスごとにネットワーク部とホスト部の長さ、利用用途が異なる
- プライベートIPアドレスは特定の範囲に決まっており、社内ネットワークで使われる
- CIDR表記(例:192.168.1.0/24)でIPアドレスの範囲を効率的に表現できる
これらの知識をもとに、IPアドレスの範囲や用途を理解し、ネットワーク設計や管理に役立てることができます。