就職活動や転職活動でよく目にする「平均年収」。しかし、その数字を見た多くの人が、「何だかおかしい…?」と感じたことがあるのではないでしょうか?
この記事では、平均年収が実感と異なる理由を、平均値と中央値の違いや、を説明しながら詳しく解説します。
「平均年収」以下の人が6割もいるのはおかしい?
日常生活でもよく耳にする「平均年収」。しかし、平均年収が思ったよりも高いと感じている人も多くいるようです。
100人いると50人は平均以上、50人は平均以下と思われがちですが、実態はそうではありません。
厚生労働省の調査によると、約6割の人が平均年収以下の収入になっています。中央値の423万円と自身の年収を比べた方が実態に近いのですが、平均値の545万円と比べているため、「なんだかおかしいのでは?」と言う感覚を持ってしまいがちなのです。
ちなみに、中央値の423万円を基準にすると、100人いると50人は中央値以上、50人は中央値以下となります。
多くの人が「平均年収おかしい」と感じてしまう理由とは
平均年収と中央値は、どちらも集団の代表値(中心的な値)として使われますが、意味が大きく異なります。
平均値:すべての値を合計して、人数で割った値
中央値:値を昇順に並べたとき、ちょうど真ん中の位置にある値
データの分布が正規分布(左右対称の山型)に近い場合は、平均値を使うのが適切です。平均値は全てのデータを反映した代表値なので、データの全体的な傾向を把握できます。
データの分布が歪んでいる場合は、中央値を使うのが適切です。中央値は外れ値の影響を受けにくいため、データの中心傾向をより正確に表すことができます。
つまり、平均年収は極端な高額所得者によって大きく左右される一方、中央値は大多数の年収を反映する指標と言えます。
企業規模や業種、年齢で異なる平均年収
平均年収は、企業規模や業種によって大きく異なります。これも平均年収が何だかおかしいと感じてしまう理由の1つでもあります。
企業規模による違い
一般的に、企業規模が大きくなるほど平均年収は高くなります。
大企業: 従業員数1000人以上の企業
中小企業: 従業員数300人~999人の企業
小規模企業: 従業員数300人未満の企業
2022年の厚生労働省の調査によると、以下のような記載があります。
資本金 2,000 万円未満の株式会社においては 391 万円(男性 476 万円、女性 265 万円)となっているのに対し、資本金 10 億円以上の株式会社においては 649 万円(男性 757 万円、女性 398 万円)となっている
令和4年分 民間給与実態統計調査 p.19
業種による違い
業種によっても平均年収は大きく異なります。
高収入な業種: 金融・保険、情報通信、電気・ガス・熱供給・水道
平均的な業種: 製造、卸売・小売、サービス
低収入な業種: 農林水産、宿泊業・飲食サービス業
令和4年(2022年)分の民間給与実態統計調査によると、次のような記載があります。
1年を通じて勤務した給与所得者について、業種別に給与階級別分布をみると、平均給与が最も高い「電気・ガス・熱供給・水道業」では 800 万円超の者が 43.5%と最も多く、それに次ぐ「金融業,保険業」でも 800 万円超の者が 28.1%で、最も多い。一方、平均給与が最も低い「宿泊業,飲食サービス業」では 100 万円以下の者が 28.4%と最も多くなっている
令和4年分 民間給与実態統計調査 p.26
年齢による違い
平均年収は年齢によっても大きく異なり、55〜59歳でピークとなります。
まとめ
平均年収はあくまでも参考情報であり、個人の年収はさまざまな要因によって異なります。自分の年収を把握するためには、平均年収だけでなく、中央値や分布なども参考にすることが重要です。
また、平均年収は年齢区分別によっても大きく変わりますので、注意するようにしましょう。